人物デッサンにおいて、実際のモデルを観て描くには限界があります。そんな時、難しいポーズもできるデッサン人形があれば、あらゆる角度から立体的に人物をとらえることができ、大変便利です。この記事では、おすすめのデッサン人形と使い方を紹介します。
この記事の目次
デッサン人形とは
デッサン人形とは、デッサンをする時に使う人形で、いろいろなポーズを取らせることができるアイテムです。デッサン人形を観ながら描くと、人物を立体的にとらえやすくなり、とても便利です。
人体構造の知識も必要
しかし、デッサン人形さえ使えば人体のデッサンが完璧かというとそうではありません。関節や筋肉の構造の知識がなければ、人形に『不自然なポーズ』を取らせてしまうこともあります。
また、デッサン人形は人間の筋肉の形などを完璧に再現しているわけではありません。そのため、筋肉のつき方に関する知識などを補わなければ、不自然な絵になってしまう場合もあります。
人間の皮膚の下には筋肉があり、その中には骨があります。まずは自分や友達の体の動きやポーズを観察しましょう。また、『人体筋肉図』などをよく見るなどして、実物の体のつくりをある程度頭に入れてからデッサン人形を使うことをおすすめします。
デッサン人形を使うメリット
デッサン人形を使ってデッサンをすることには、大きく分けて次の2つのメリットがあります。
人体バランスを崩さずに描ける
人体の絵を描く時に行き詰りやすいのが、そのバランスです。バランスよく描くポイントとして『手と腕の長さの比率』を知っておくことが大切です。デッサン人形を観察すると、人体のバランス・比率をよく理解することができます。
例えば、腕の長さと体の大きさのバランスについては、以下のとおりです。
- 上腕の長さ=肩から腰のくびれまでとほぼ等しい
- 前腕の長さ=腰のくびれから脚のつけ根までの長さとほぼ等しい
頭の大小や体格の違いに関わらず、体と腕の長さの比率は、基本的に同じです。
また、『顔の大きさは手の大きさとほぼ同じ』ということも覚えておきましょう。この場合の顔の大きさとは、髪の生え際からアゴの先までの長さのことです。
いろいろな角度から立体的に観察できるデッサン人形を使うことによって、人体のバランスを崩さずに描けるようになります。
難しいポーズも描きやすい
実際に目の前にモデルがいてデッサンできる環境にある時でも、お願いできるポーズには限界があります。難しいポーズだと、長時間できないような場合も多くあります。
デッサン人形なら、ずっと同じポーズを取り続けてくれますし、あらゆる角度から観察することができるので、大変便利です。
デッサン人形の種類と特徴
デッサン人形にはいくつかの種類があり、見た目も質感もさまざまです。主に次のような種類があります。
- 木製タイプ:シンプルな形で、関節の可動域が狭いものが多く、限られたポーズになりますが、見た目のおもしろさで人気があります。
- ドールタイプ:骨格や筋肉が人間に近いデザインで、デッサン用や、服を着せて飾るために使われる人形です。
- シームレスタイプ:関節などの可動域が覆われているため、ボディラインが途切れず、リアルなデザインになっています。
木製は簡単な動きの確認に
木製のデッサン人形は、1,000円以下で入手できるものもあるので、安価で入手しやすいことが魅力です。可動域は狭いものが多く、シンプルなデザインなので、人体としてのリアル感はありません。
大まかなバランスや、関節の動きの確認のために利用できます。ある程度、体の構造を知っている人が簡易的に動きを確認したい時に便利です。
ドールは可動域がとても広いのが特徴
ドールタイプは、人体に近いリアルなデザインで、可動域が広いことが特徴です。実際の人間の動きに近く、上半身や腰も動かせるので、取らせたいポーズを実現しやすいです。筋肉のつき方など、体の形がリアルなので、人体の形状をよく理解するためにも役立つデッサン人形です。
シームレスは本物の人間のようなリアルさ
シームレスとは『つなぎ目がない』という意味で、可動部分が樹脂などで覆われた状態になったデッサン人形です。より皮膚らしさを感じられるシリコン素材のものもあり、内側に骨、筋肉、関節を想像させるリアルな形と質感が特徴です。筋肉の立体感や陰影は、デッサン人形にあてる照明の角度などによっても、異なる表情をだすことができます。
手だけの人形もあり
手をデッサンする時には、自分の手をよく見て描くこともおすすめですが、片手がふさがってしまい、不便なこともあります。そんな時は、手だけのデッサン人形が便利です。可動域がどこまで出せるかは商品によって違いがありますが、繊細で難しい手の動作も、手のデッサン人形ならば指の関節の動きまでよく観察できます。
シームレスタイプ(ハンドマネキン)もあり、デッサン用として使うだけでなく、デパートのアクセサリー売り場のディスプレイなどでもよく見かけられます。
デッサン人形を探すならamazonで
amazonでは、様々なデッサン人形が販売されています。ここでは、amazonで買えるおすすめのデッサン人形を紹介します。
ターレンス モデル人形 12B
『ターレンス モデル人形』は、絵画用品を幅広く取り扱うターレンス定番の木製デッサン人形です。12Bは女性型で、12Aは男性型です。14ヵ所の関節が稼働しで自由に動かせます。ツヤ感がある手になじみやすい木製で、専用の支柱棒はネジ式になっていて取り外しOKです。
人形の本体には複数のネジ穴が開いているので、支柱棒の差し込み位置が変えられます。支柱棒の位置を変えることで、さまざまな視点から観察できます。
- サイズ:全長30.5cm
- 材質:木製
h.effect 木製 左手
『h.effect』(エイチエフェクト)は、手のデッサンモデルを販売しています。指の関節の動きや、さまざまな角度から見た手の様子をデッサンしたい時に役立つデッサン人形です。全身のデッサン人形にも手が付いているものの、サイズは小さく、細部のディテールまで詳しく観察するのには適していません。そのため、全身のデッサン人形だけでなく、手のデッサン人形も併用するといいでしょう。
左手と右手がそれぞれ販売されています。素材はナチュラルな白木が美しい木製です。デッサン用だけでなくディスプレイやインテリアとして使うこともできます。
- サイズ:30cm
- 材質:木製
S.H.フィギュアーツ ボディくん
『S.H.フィギュアーツ ボディくん』は、玩具メーカーとして有名なBANDAIの商品です。樹脂素材で扱いやすいフィギュアタイプのデッサン人形です。男性バージョンであるこの『ボディくん』は、美しい筋肉の付き方が特徴で、立っているだけでサマになります。
DXセットの内容はボディくん本体に加え、小道具パーツとしてミニブックとPC・タブレット・モデルガン・模造刀・ペン・スマートフォン・携帯電話が付属します。
専用台座がないと不安定で、ポーズのバリエーションが少なくなってしまいます。台座はDXセットにしか付属していないので注意してください。グレイカラーのボディは陰影がつかみやすく、デッサンの陰影付けが苦手な人にもおすすめです。
可動域の広いデッサン人形ですが、より人間らしさを出すために現実からかけ離れた無理な範囲までは稼働しないように作られています。女性バージョンの『ボディちゃん』もあります。
- サイズ:15cm
- 材質:ABS/PVC
1/6スケール 超柔軟性シームレス男性素体
『超柔軟性シームレス男性素体』は、まるで運動選手のような、鍛え上げられた筋肉が印象的なシームレスタイプのデッサン人形です。筋肉に厚みがあるので全体にボリューム感があり、迫力満点のリアルさです。超柔軟性タイプで、可動域が広く、人体の90%の動きを再現できる優れものです。陰影もしっかりとわかるのでデッサンにとても役に立ちます。
肌(皮膚)は医療用グレードのシリコン素材が使われ、骨組みには耐久性に優れたステンレススチールが使われています。とても柔軟でありながら耐久性にも優れて使いやすく、同素材の女性素体も人気です。
頭(ヘッド)のついた状態のパッケージ写真で販売されていますが、ヘッドパーツは別売りなので必要な人は購入しましょう。
- サイズ:29cm
- 材質:医療用素材(肌)/ステンレススチール(骨組み)
実はデッサン人形にはこんな使い方も
100均や無印、IKEAなどでも取り扱われるようになったデッサン人形は、必ずしもデッサンの勉強だけに使われているわけではないようです。意外な使い方をいくつか紹介します。
部屋のインテリアに
デッサン人形は、部屋に置いて飾っておくだけで、インテリアとしても役立ちます。特にシンプルな木製タイプは、それだけでおしゃれな雰囲気を出すことができます。デッサン人形は画材用品だからといってしまい込んでしまうのではなく、インテリアの一部としての居場所を与えてあげましょう。
アイデアしだいでさまざまな収納入れに
少数派ではありますが、デッサン人形には『収納』としての使い方もあります。主に木製のデッサン人形がその対象になるのですが、頭や腕に様々なものを掛けて、フックのような用途で使えます。
例えば、マスキングテープなどを掛けたり、腕を広げさせてキーホルダーやストラップをぶら下げて収納したりなどです。前後に広げれば脚にも掛けられるほか、あぐらの状態で座らせて抱きかかえるようにペンやスマホを持たせてデスクの上に置いてみるのも、シュールで楽しい使い方です。
面白ポーズをさせて息抜きを
デッサン人形は人間の形をしているため、画材道具の一つとしての役割だけでなく、ポーズによってはとても面白みが出て、置いてあるだけで思わず笑いを誘ってしまう、チャーミングな存在です。
部屋の片隅に座らせてみたり、物陰から人形がこちらを覗いているようにしたり、はたまた小さな人形やドールハウスなどと組み合わせて、ジオラマ世界の中にデッサン人形の巨人が現れたようにするのもいいでしょう。デッサンという地道な作業の中で、デッサン人形は時に笑いや癒しを与えてくれる存在なのです。
最近は3Dデッサン人形も人気
3Dデッサン人形とは、PCやスマホ上で使えるデッサン人形の3Dグラフィックのことです。難しいポーズやアングルも自由自在なので、モノとしてのデッサン人形よりも、自由なポーズを再現できます。
簡単アプリをダウンロードするだけ
3Dデッサン人形を使うには、アプリをダウンロードするだけです。自分のスマホやPCで、すぐに3Dデッサン人形が使えます。
ArtPose
『ArtPose』(アートポーズ)は、さまざまなポーズに対応できる2種類の3Dデッサン人形を表示できるアプリです。iOS版と、Android版の両方が利用できます。通常の裸体状態のモデルと、人体模型さながらの筋肉の様子がよくわかるモデルの2体です。男性版と女性版で、別々のアプリになっています。
光源の位置を変更したり、ポーズを変えたりする操作が自由にできます。高画質の3DCGで、視界も360度変えられるのでデッサンの勉強をしたい人、とくに陰影の付け方がわからない人などにピッタリです。基本ポーズがいくつか用意されていて、それらをアレンジしてポーズを作ることも可能です。ヘアスタイルや筋肉の量も変えられます。
スマホでポーズを確認しながらPCで描いていくということもできますので、様々な場面で便利に使えるアプリです。
マジックポーザー
『マジックポーザー』は、アーティストのためのポージングツールです。一般的な男性・女性モデルだけでなく、マンガ用の6等身モデルも表示できます。武器や銃、家具などの小道具も充実しています。慣れるまでポーズを決めるのが難しいアプリが多い中で、とてもポーズを決めやすいと高評価のアプリです。
480円の有料アプリですが、7日間の無料トライアルがあるので、自分に合っているかどうか試してみることができます。頭で思い描いたポーズがスマートフォンですばやく作成でき、オンラインでポーズを共有することもできる楽しいアプリです。
Handy Art Reference Tool
『Handy Art Reference Tool』は、全身モデルではなく、パーツごとの3Dデッサンモデルを表示するアプリです。手や頭部などのパーツだけをリアルな3DCGで、様々なアングルから表示できます。手のモデルについては100種類以上の、既に用意されたポーズのなかから選べるようになっています。また、モデルの指を自由に動かして、自分のイメージするポーズに変更することもできます。
追加の課金をすれば、動物の頭蓋骨のモデルも表示できます。様々なデッサンをしっかり勉強したいという人を満足させてくれる教育性の高いアプリです。その精度の高いリアルさは、手であればその皮膚の毛穴がわかるほど生々しく、怖いくらいの迫力があります。
無料で使えるサイトもおすすめ
3Dデッサン人形のアプリは、有料のものが多いのですが、無料で手軽に利用したい人は、デッサン支援のWebサイトをおすすめします。
Posemaniacs
『Posemaniacs』ポーズマニアックスは、絵の練習の支援サイトです。3Dソフトによって作られたデッサン用のポーズが1,000種類以上も無料公開されているデジタルポーズ集です。趣味で絵を描く人だけでなく、プロのイラストレーターやデザイナーも利用しています。
ポーズや性別ごとに様々な3Dモデルが用意されています。マッチョな男性や、子供サイズのモデルも選べます。すべての画像が皮膚のない、筋肉の動きのわかりやすいリアルな姿なので、絵の参考に最適です。アングルを自由に変えられるので、人体をさまざまな角度から見られます。全身だけでなく、顔や手だけの3D画像もあります。
また、『30秒ドローイング』のコーナーもおすすめです。10~90秒の間で時間を設定し、時間を過ぎると自動的にポーズが変わるというものです。絵をスピーディーに描く『クロッキー』の勉強になるわけです。PCだけでなく、スマートフォンも対応しているので好きな場所で絵の勉強ができる嬉しいサイトです。
まとめ
デッサン人形には、さまざまな種類があるので、用途にあった、自分が使いやすい人形を選びましょう。
また、スマホなどで使える3Dデッサン人形も便利なのでおすすめです。自分に合ったデッサン人形を活用して、画力を磨いてみましょう。