デッサンを始めたばかりの人の中には、何を練習すればよいのかわからない、上手に描くためのポイントがわからないという悩みを抱えている人が多くいます。この記事では、デッサン初心者が上達できる練習法やポイントを紹介します。
この記事の目次
デッサン練習は画力アップに効果的
デッサン練習は、画力アップに効果的です。デッサン練習によって、画力アップに必要な『観察力』が鍛えられ、『表現力』が身に付くからです。以下、くわしく解説します。
観察力が鍛えられる
デッサンは、対象をしっかりと見て観察して描くので、観察力を鍛えられます。
デッサンでは、最初に描くものをよく観察して、物の本質を把握します。本質とは、描く対象となる物の形状・質感・陰影などの特徴です。そして、観察したことを、そのまま紙面に表現します。
観察力が鍛えられると、細かい点に気づいたり、バランスの崩れを修正したりできるので、リアルな上手い絵を描けるようになります。
表現力が身に付く
デッサンの練習では、表現力も身に付きます。デッサンとは、観察して得た情報を、絵で表現するものです。デッサン練習で、観察したことを忠実に表現することを繰り返すことで、表現力が身に付きます。 表現力が付くと、面の描き方や立体的な描き方、質感の表現方法、光源による陰影のつけ方などの描き方が上手くなるだけではなく、見た人を感動させることができるようにもなります。
デッサンに必要な道具を準備しよう
デッサンを始めるためには、デッサン用の道具が必要となります。ここでは、デッサンに必要な道具と選び方について解説します。
鉛筆
STAEDTLER公式サイト:http://www.staedtler.jp/
鉛筆には、色々な硬度があります。10Hから10Bまでの全22種類の硬度があり、アルファベットと数字によって各鉛筆の硬度が記されています。アルファベットはH・B・Fの3種類です。 Hはハード(Hard)の頭文字で、硬くて薄く描ける鉛筆です。Bはブラック(Black)の頭文字で、柔らかいので濃く描けます。Fは『しっかりとした』という意味のファーム(Firm)の頭文字で、HとHBの中間の硬さです。 デッサンでは、初めに鉛筆の硬度すべてを揃える必要はありません。初心者はだいたい3Hから3Bのものをそれぞれ用意しておけば十分です。 しばらくすると、今ある鉛筆だけでは描き足りないと感じることがありますが、その都度、必要な硬さの鉛筆を追加すればよいでしょう。
消しゴム
STAEDTLER公式サイト:http://www.staedtler.jp/
デッサンにおける消しゴムで、よく使われるのは『練り消し』です。練り消しとは、自由自在に形を変えられる柔らかい粘土のような消しゴムです。 練り消しは、デッサンで描いた部分の修正や色抜きなどのために、押し付けたり、擦り付けたりして使います。色々なメーカーが販売していますが、あまり粘着性の高くないタイプを選びましょう。文字を消すために使われる、おなじみの『プラスチック製消しゴム』は紙を傷めてしまうためデッサンではあまり使用しませんが、紙の余白部分が汚れてしまった場合などに使います。
練習用紙
デッサンの練習は、色々な紙で対応可能です。ただし、あまり薄い紙は、描いているうちに破れるなど、傷みやすいので、厚めの紙を選びましょう。 また、表面がつるつるの紙は、鉛筆でのデッサンでは黒鉛が定着しにくくいので、表面がざらざらの紙が適しています。例えば、画用紙やスケッチブックは、ある程度の厚みもあり、鉛筆の黒鉛が定着しやすいのでデッサンの練習用紙に最適です。 裏表紙が硬いスケッチブックなら、持ち歩いてどこでもデッサンできますので、練習用紙におすすめです。
そのほか
上記の道具は、デッサンをする際に最低限必要な道具です。そのほかにもデッサンをするうえで、あると便利なアイテムは下記のとおりです。
- 木製パネル(画用紙を張り付けるためのパネル)
- イーゼル(木製パネルを立てかけるためのスタンド)
- 水張りテープ(画用紙を木製パネルに張り付ける際に使うテープ)
- 刷毛(画用紙を木製パネルに張り付ける際、紙に水を塗るための刷毛)
鉛筆の持ち方と削り方
通常の鉛筆とは違って、デッサン鉛筆には持ち方や削り方にそれぞれ特徴があります。持ち方の特徴を知り、描き分けに活用しましょう。また削り方に慣れる必要があります。
持ち方1つで表現が変わる
デッサンでは、鉛筆の持ち方1つで表現が変わります。デッサンにおける鉛筆の持ち方は大きく分けると下記の3つです。
- 受け手持ち
- 順手持ち
- 鉛筆持ち
受け手持ちは、手のひらが上向きの状態で、鉛筆を人さし指の上にのせて親指で支える持ち方です。 順手持ちは、手のひらが下向きの状態で、鉛筆を親指・人さし指・中指の三本で軽くつまんだような持ち方です。鉛筆持ちは、通常の文字を書くときに持つ鉛筆の持ち方です。持ち方によって、引きやすい線が異なり、筆圧も変わります。
また、鉛筆を持つ位置によっても描く線のタッチが変わります。
大きく描く、塗る
『受け手持ち』は、あまり力をかけず、薄く塗るために向いています。また、腕の動きを使って、広範囲に線を引きやすいので、大きく描いたり、塗ったりしやすいです。『順手持ち』も大きく描くときに向いていますが、受け手持ちよりも力をかけて描くことができるので、広い範囲の陰影などを濃く塗るときに使います。 また、どの持ち方でも、鉛筆を持つ位置で、筆圧・濃さを調節できます。鉛筆を長めに持つと薄く、鉛筆の軸を短めに持つと濃い色を表現できます。
細かい部分を描く
『鉛筆持ち』は、指先を繊細に動かしやすいので、細かい部分を描くのに向いています。 また、鉛筆持ちは、最も筆圧をかけやすい持ち方なので、力強い線や、陰影の最も濃い部分などを描くのに適しています。ただ、強く描きすぎると修正がしにくくなりますので、初心者は筆圧に注意をしましょう。
デッサン鉛筆はカッターで削る
デッサン鉛筆は、鉛筆削りではなくカッターで削ります。デッサン鉛筆の芯は、芯の横の部分を使って太い線が描けるようにするため、尖らせずに1cmほど露出させる必要があるからです。 カッターで削る方法なら、細かい部分を描くために、芯の先端を削って尖らせることも可能なので、細い線と太い線の両方に対応しやすく、鉛筆削りよりも自由がききます。
ここから始めよう、初心者の練習方法
デッサンの練習には順番があります。ここでは、初心者が最初にすべき練習方法とポイントについて紹介します。
丸や四角などのシンプルな形
デッサン初心者が一番初めにやるべき練習は、丸(球体)や四角い立体などのシンプルな形を描くことです。例えばティッシュ箱など、身近にあるシンプルな形のものをよく観察して、デッサンしてみましょう。
デッサンを始めたばかりのころは、簡単な図形でも難しいものですが、練習を繰り返すことで上手く描けるようになります。
球体の輪郭は、どの角度からも正円に見えることに注意しましょう。立体的な球体に見えるようにするには、影の部分をよく観察して、影の濃さを微妙に調節しながら描く必要があります。
また四角い立体を描く場合は、きれいな直線で輪郭を描くようにしましょう。フリーハンドでもまっすぐな線を引けるようになることが、デッサン上達の秘訣です。
自分の手を描くのもおすすめ
ある程度、基本図形が描けるようになったら、自分の手を描くのもおすすめです。いつでも自由自在に、自分の思い通りのポーズを決められるので、デッサンの練習に最適です。 手を描く場合は、指の関節・しわ・手のひらの膨らみ部分など手の構図や特徴をしっかりと把握して、意識しながら描きます。何度も自分の手を描いていくことにより、手の形・構造を理解できるようになります。
デッサン練習をするときのポイント
デッサンを練習するときは、しっかりとポイントを押さえて練習することが大切です。ここでは、デッサン練習をするときに押さえるべきポイントを紹介します。
写真ではなく実物を見て描く
デッサンは、写真ではなく実物を見て描くことが大切です。写真は2次元なので、それから得られる情報は、実物から得られる情報よりもはるかに少ないのです。立体的な対象物をよく観察して、特徴をつかむことが観察力につながります。そして、観察したことを2次元の紙面に、立体的に表現することで、表現力が身に付きます。 写真だけで描く練習をすると、2次元のものを2次元に表現するので、立体をよく観察して2次元に表現するということが不要です。そのため、観察力や表現力があまり身に付きません。
早く上達したいなら毎日の練習が必要
デッサン初心者が、早く上達したいなら毎日の練習が必要です。 ただし、単にデッサンを描くだけではなく、絵ごとにテーマ・課題などの目標を決めて練習することも大切です。デッサンを始めたばかりの人は、簡単な図形をきれいに描けるようになるという小さな目標でもOKです。
慣れてきたら人物デッサンにステップアップ
少しデッサンに慣れてきたら、人物デッサンにステップアップします。人物デッサンは、構図の取り方・衣服の描き方など難しい部分があります。 また、肌の質感・目・髪の毛などの表現方法や、目では見えない筋肉・骨格などを意識しながら描くことになるので、高いデッサン力を身に付けることができる分野です。
人体の比率が重要
人物画を描くときには、人体の比率が重要です。頭部・上半身・下半身・腕などの各部位の比率をしっかりと目測してから描き始めないと、不自然なデッサンになってしまいます。人体の比率は、多少の個人差はありますが、大体同じなので日頃から人体の各部位のバランスを意識して観察してみましょう。
デッサン人形を使うのもおすすめ
人体の比率がよくわからないという人は、デッサン人形を使って練習をするのもおすすめです。デッサン人形とは、人体を立体的に描くための人形です。木製タイプやドールタイプ、シームレスタイプなど、様々な種類があります。 木製タイプのものは、可動域が限られており自由自在なポーズが取れませんが、人体バランスを把握したい人に向いています。ドールタイプのものは、木製タイプよりもリアルに作られており、骨格や筋肉の付き方などを学べます。また、可動域も広くポーズも自由に決められるので、デッサン練習に最適です。 シームレスタイプは、可動部分が覆われていて、ボディラインの切れ目がなく作られています。ドールタイプなど、可動部分に隙間があるデッサン人形では描きにくいという人におすすめです。
もし素材選びに迷ったら画像無料サイトへ
デッサンを練習したいけれど、どんなものをデッサンすればよいのかわからないという悩みが出てきたら、画像無料サイトを活用しましょう。 ここでは、素材選びで迷ったときにおすすめの画像無料サイトを3つ紹介します。
ポーズマニアックス
『ポーズマニアックス』は、3Dの人体モデルのポーズが豊富に掲載されている絵の練習サイトです。このサイトには、性別や年齢層別、体型別に、ポーズの異なる様々な人体の3Dグラフィックがあります。自由にアングルを変えて、色々な角度から人体モデルを観られます。 また、このサイトではランダムで自動的に色々なポーズの画像が出てくるトレーニング機能もあります。30秒で素早く人物の形・バランス捉えて描く練習なので、観察力を鍛えるのに最適です。
『pinterest』は、様々なジャンルの画像が無料で検索できるサイトです。検索欄にキーワードを入力して検索するだけで、それに関連した画像が表示されます。pinterestの特徴は、画像をブックマークできるという点です。画像をピン(ブックマーク)することで、その画像にひもづいたURLもピンされます。URLにアクセスすれば、画像をもっと詳しく見ることもできます。 描きたいものの名前などを検索するだけで、簡単にデッサンの練習に使える写真を見つけることができます。
Human Anatomy for Artist
『Human Anatomy for Artist』は、アーティストが描くための人体の裸体を中心とした画像サイトです。男性版と女性版に分かれており、人種や年齢、体型、髪型など細かく設定して検索できます。 洋服を着た人のデッサンをする場合も、洋服の下の見えていない身体構造を意識しながら描くことが、上達の秘訣です。このサイトでは、様々なポーズの人物の裸体のポーズが載っているので、人物画の基本である裸体の描き方を練習したい人に向いています。
デッサンの基礎を学べるおすすめ本3選
自己流でデッサンをしていても、いまいちポイントがわからないという人は、デッサンの基礎を学べる本を参考にするのもよいでしょう。ここでは、初心者にわかりやすいデッサンの基礎を学べるおすすめ本3選を紹介します。
デッサンの基本
『デッサンの基本』は、デッサンに必要な道具と、その使い方などの基本的なことから、上手に描けるためのコツまで、デッサン初心者にもわかりやすく解説された本です。 鉛筆の持ち方についても、どのように持てばどのような線が描けるのかということを初心者にもわかりやすく説明しています。また、デッサンの基本となる、対象を観察して形を読み取る方法をくわしく解説しています。 静物や人物、動物、自然などについて、それぞれ作例とともに描き方が紹介されています。現役芸大生や美大生の絵も載っており、参考になる本です。
人体のデッサン技法
『人体のデッサン技法』は、どのように描けば人体を簡単に描けるようになれるかというテクニックを紹介した本です。 この本では、デッサンを描くうえで必要な人体構造を簡単にわかりやすく説明しています。骨格・筋肉がどのように表面に出てきているのかを理解し、それを描く方法について学べます。 どの線を最初に描くのかなど、細かい手順ごとに、イラストつきで詳しく説明しています。この本の手順に沿って描いていくことで、人物デッサンの基本の描き方が身に付きます。
風景デッサンの基本
『風景デッサンの基本』は、全8章で構成された鉛筆デッサンの風景の描き方の基本が学べる本です。 第1章のデッサンの基本では、デッサンで必要な道具や使い方、基本図形の描き方などを紹介しています。 第2章では、風景画を描く時に必要な遠近法や、透視図法を用いた描き方のポイントを学べます。 第3章から第7章では風景の中に建物や人などを加えて、実際の風景画の描き方を実践していきます。 第8章は、作者が描いた鎌倉周辺の風景画が紹介されており、デッサンの表現方法の参考になります。
まとめ
デッサンが上達するためには毎日目標をもって練習を続けることが大切です。最初は、丸や四角などの簡単な図形から練習をしてみましょう。 写真よりも実物を観察しながらデッサンをすることが観察力と表現力を身に付ける方法です。デッサンに関する本や、画像サイトを活用して、デッサンの練習を続けていきましょう。