キャラクターイラストを描いているけれど、背景は苦手だから描きたくない……。
キャラクターの背景をごまかす方法はないかな?
今回はpixivから、瑠璃森しき花さんのご投稿を紹介します。
背景が苦手な方のための、人物イラストテクニックを見ていきましょう。
※この記事で紹介している内容はご本人の許可を得て掲載しています。
この記事の目次
イラストの背景のごまかし方を解説
講座の概要
皆さんは背景を描くのが得意でしょうか?
瑠璃森しき花さんは、「描きたいのは背景より人物」ということに気づいたそうです。
もう少し突き詰めると、「ふとしたワンシーンの情景」を描くことが好きだそうです。
当解説では、瑠璃森しき花さんによる、人物イラストの見栄えを良くするコツを紹介しています。
- それっぽく見える「人物メインの情景絵」
- 背景をしっかり描かなくて済む方法
1.人物のコツ「拡大してみる」
人物は可愛く描けたけど、イラスト全体を見てみるとイマイチ……。
そんなときは人物を拡大してみましょう。
人物を大きくすると絵に迫力が出て、背景を描くスペースも減ります。
作例イラスト
2.人物のコツ「傾けてみる」
可愛く描けた人物を拡大してみたけどイマイチ……。
そんなときは人物を傾けてみましょう。
カメラのフレームに対して人物を傾けることで、ドラマチックな印象を生み出します。 斜めの構図は不安定なので、見る人がドキッとしやすいという説もあるそうです。
作例イラスト
3.人物のコツ「逆光にしてみる」
逆光の表現を入れると、ドラマチックに見えて映えます。
背景もほとんど白飛びさせることができます。
影を落とすときは広範囲に濃いめに入れて、人物のキワの部分に強めの明るい光を入れると引き立ちます。
物足りなければ、グレーで背景のシルエットをざっくり描いておけば、それっぽくなります(オススメは窓枠や格子)。
ぼかすと更に印象が良くなります。
作例イラスト
4.背景のコツ「スタンプや素材を散らしてみる」
イラストソフトに入っているスタンプや、素材集の画像を貼ると、手軽に華やかになります。
複数の種類の素材を混ぜて使ってみましょう。
そのまま貼りつけるのではなく、色調補正やレイヤー効果などを使って、色やコントラストを調整すると馴染みやすいです。
素材の使用例
- 街灯の画像素材(市販の素材集1)
- カスミソウの模様の画像(市販の素材集2)
- 桜の花びらのスタンプ(イラストソフトに元々入っていたもの)
- 桜のスタンプ(クリスタでDL)
作例イラスト
5.背景のコツ「ゲーム制作に使う背景素材を貼ってみる」
ゲーム制作の背景素材は、探せば無料から有料まで沢山あります(素材によって規約が異なるので、よく確認してから使いましょう)。
BOOTHやクリスタの素材サイトなどで素材を見つけることができ、個人サイトやサークルが配布・販売していることもあります。
背景をそのまま貼るのではなく、拡大してスチルイラストっぽくすれば、パースもあまり気になりません。
絵柄が違っていても、ぼかしてしまえば馴染みます。
自分の絵柄に比べて背景素材の彩度が強すぎる場合は、調整をしてみましょう。
ゲーム背景は、色味が鮮やかで青みがかっていることが多いです。
作例イラスト
6.背景のコツ「ざっくり描いて、限界までぼかしてみる」
それっぽい色を置いてざっくりと背景を描き、ぼかしてみましょう(解説例では、葉っぱのスタンプを二色でポンポンと置き、ぼかしています)。
すると、カメラの効果で背景がボケているように見えて、人物が引き立ちます。
また、手前の人物を大きく描写することで背景が遠景になり、パースを気にしなくてもよくなるというメリットがあります。
作例イラスト
7.背景のコツ「写真を加工して、ぼかしてみる」
自分で撮った写真を加工して、ぼかしてみるとそれっぽくなります。
日中の絵であれば、色調補正で彩度を上げたりコントラストを上げたりすると、イラストっぽくなります。
解説例では夜の雰囲気を出すために、色調補正や乗算レイヤーなどで暗くした後、発光レイヤーなどを使って明かりを描き足しています。
作例イラスト
8-1.背景のコツ「トレスや加工可の写真に手を加えて使う」
トレス可能な写真であれば、写真をなぞって色をつけて、自作の背景を作ってしまいましょう。
普段から、風景の写真を色々な角度から撮っておくと便利です。
加工ができる写真素材は、ネットに投稿されている画像や、本・DVDで販売されている物など様々です。
使用する際は、素材の規約をよく確認しましょう。
背景のクオリティに自信が無ければ、ぼかしてしまえばそれっぽくなります。
作例イラスト
8-2.背景のコツ「トレスや加工が可能な写真に手を加えて使う(イラスト風にする)」
加工が可能な写真であれば、写真っぽさを消して絵にしてみましょう。
- 色調補正で全体的に彩度を上げます。
- 絵にしては密度がありすぎる部分を、スポイトで色を採って塗りつぶし、絵っぽくします。
- レンズや構図の都合で歪んだ箇所は、画像変形や描き足しなどで補正します。
-
全体的に青色を入れるとイラストっぽくなります。
上から青系の発光レイヤーを入れたり、黒い部分に青みを足したりしましょう(絵の雰囲気によっては青を入れなくてもよいです)。
※オススメ参考書:KADOKAWA『写真加工で作る風景イラスト』(著:さけハラス)
作例イラスト
9-1.背景のコツ「パースを使わずに、レイヤーで奥行きを出してみる」
左の絵のように、パースを使って縁側を描くのは大変そう……。
斜めの線を使って奥行きを出そうとすると、パースが必要で難しいです。
真ん中や右の絵のように、パースを使わずに演劇の舞台に書き割りを置いていく感じで、絵を作っていきましょう。
背景パーツをレイヤーのように重ねれば、それっぽくなります。
レイヤーの使用例
- 真ん中の絵の場合、遠景→庭の木々→窓→人物→火鉢→手前の障子
- 右の絵の場合、奥の障子→手前の障子→柱と雨戸と人物→草むら
洋室の場合は、遠景→壁や窓→ソファ→人物→観葉植物などで考えてみてください。
作例イラスト
9-2.背景のコツ「奥行きを出さない」
部屋の角・開いている扉・階段などの難しい箇所は写さずに、壁一面だけを描くイメージです。
背景も人物も拡大して、画面いっぱいに描いてみましょう。
これくらいの描写範囲・描写内容でも、どこにいるのかは何となく伝わります。
奥行きを出さない背景の例
- 洋室(左の絵):カーテンのかかった窓のみ
- 和室(真ん中の絵):掛け軸っぽい物が掛けてある壁のみ
- 和室(右の絵):ぼかしてある障子っぽい格子のみ
- 和室(下段の絵):ふすまのみ
その他にも、教室が舞台なら黒板側だけを描き、廊下なら窓側だけを描き、室内ならカーテンやポスター・バッグが掛けてある壁を描きましょう。
街中なら奥行きのある道ではなく、特定のお店の真正面を拡大して描いたり、横並びの店舗を遠景で描写したりします。
バストアップにするなど、足元の接地面を画面に入れない方が、パースを使わない背景はごまかしが利きやすいです。
どうしても全身を入れなければならない構図の場合は、足元に草むらや障害物を置いて隠してしまう方法もあります。
※参考図書:玄光社『吉田誠治作品集&パース徹底テクニック』(著:吉田誠治)
作例イラスト
その他のテクニック
床に寝ている人物や座っている人物を、上から見ているような絵にすれば、床や地面部分の素材を貼りつけるだけで済みます。
屋外の絵の場合は、少しアオリ気味に描けば、空の色と雲のスタンプだけで済みます。
更に、木の葉っぱのスタンプを加えると、よりそれっぽくなります。
背景の線画だけをまとめた素材集も販売されています。
モノクロ絵を描く場合は、そういった素材を貼りつけて済ませてもよいかもしれません。
その線画を元にしてカラー背景を作ることもできます。
作例イラスト
おわりに
背景をごまかす方法を覚えることで、苦手なことや気が重い作業をそぎ落として、楽しい作業に時間を割けるようになります。
瑠璃森しき花さんの場合は、どんな心ときめくシーンにしようか考えたり、着物を描いたりする作業が好きで、力を入れている部分とのことです。
皆さんも、背景をごまかす方法を活用して苦手な作業をそぎ落とし、好きな作業に時間を割いてみてください。
まとめ
人物の見栄えを良くするための、背景をごまかす方法の紹介でした。
- 人物の拡大や傾き、逆光を利用する
- スタンプを散らしたり、ゲーム背景の素材を活用したりする
- 写真をぼかしたり、写真を加工してイラスト風にしたりする
- レイヤー構成で背景に奥行きを出したり、壁などを利用して奥行きのない背景にしたりする
背景をごまかすことで、背景が描けなくても見栄えの良いイラストに仕上げることができます。
背景のごまかし方をお探しの人は、瑠璃森しき花さんの解説を参考にしてみてください。
最後に、瑠璃森しき花さんのプロフィールをご紹介します。
瑠璃森しき花さんはイラストのお仕事をしていらっしゃいます。
瑠璃森しき花さんは小説も創作されており、受賞作がコミカライズされた『魔王の庭の白い花』(原作:瑠璃森しき花 作画:十屋つぐみ)をご発表していらっしゃいます。
瑠璃森しき花さんのpixivやホームページでは、他にも素敵なイラストを投稿されているので、ぜひご覧ください!