ペイントソフトには、レイヤーの一部を隠すことができる「レイヤーマスク」の機能があります。
レイヤーマスクの使い方を覚えることで、マスクを活かした表現ができるようになり、イラスト制作もスムーズに進められます。
今回は、ペイントソフトのCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)で、レイヤーマスクを使う手順を見ていきましょう。
この記事の目次
クリスタのレイヤーマスクの使い方
①レイヤーマスクとは何か?
レイヤーマスクとは、レイヤーに表示されている内容を部分的に隠す(マスクする)ことができる機能です。
解説例では、リンゴのイラストに円形のレイヤーマスクを乗せています。
実際にリンゴが描かれているレイヤーには手をつけず、上からマスクを置いて一時的に隠している、という状態です。
クリスタやPhotoshop、SAIなど、様々なペイントソフトにレイヤーマスクの機能が備わっています。
レイヤーマスクを使うメリット
- 修正・変更に対応しやすい
- 「隠す」機能に様々な使い道がある
描いた内容を消してしまうと、後から修正や変更をするのが難しくなってしまう場合があります。
そんなときには、レイヤーマスクを使って一時的に隠しておきましょう。
記事の後半に、実際のイラスト制作でレイヤーマスクを活用する例を紹介しています。
②レイヤーマスクの作り方
レイヤーマスクを作成する
隠したい部分があるレイヤーを選択して、レイヤーパネル内にある[レイヤーマスクを作成]ボタンを押します。
レイヤーの内容を隠す
レイヤーマスクが選択されていることを確認して、[消しゴムツール]や、透明色を設定した[ペンツール]でキャンバスをなぞります。
なぞった箇所(黒い部分)はマスクがかかり、隠れるようになります。
※リンゴが描かれている左側のサムネイルではなく、右側のサムネイルが選択されていることを確認しましょう。
※「左側がレイヤー」で「右側がレイヤーマスク」です。
レイヤーの内容を再表示する
描画色(透明色以外)が設定されている[ペンツール]でキャンバスをなぞると、なぞった箇所のマスクが削除されます。
また、レイヤーマスクは[消しゴムツール]や[ペンツール]の不透明度の影響も受けます。
ブラシ濃度が100%でない描画ツールでキャンバスをなぞると、解説例のように半透明なマスクがかかります。
③レイヤーマスクを選択範囲から作成する
レイヤーマスクは、クリッピングと似たような使い方もできます。
リンゴの形からマスクを作って、リンゴからはみ出さずに色を塗ってみましょう。
リンゴの選択範囲を作成する
リンゴのレイヤーのサムネイル上で、Ctrl+左クリックをします。
リンゴの選択範囲が作れます。
リンゴの形からマスクを作る
新規レイヤーを作成して、[レイヤーマスクを作成]ボタンを押します。
選択範囲を作っている場合は、選択範囲外(リンゴの形の外側の部分)がマスクされた状態でレイヤーマスクが作成されます。
はみ出さずに色が塗れる
今回はレイヤー自体に色を塗りたいので、右側のレイヤーマスクから左側のレイヤーに選択を切り替えましょう。
リンゴの形の外側がマスクされているため、リンゴからはみ出さずに色を塗ることができます。
メニューバーからもレイヤーマスクを作れる
メニューバーにもレイヤーマスクを作成するボタンがあります。
選択範囲を作成している状態で、[レイヤー]→[レイヤーマスク]→[選択範囲外をマスク]を押しましょう。
実践編①.レイヤーの前後関係を正しく見せる
レイヤーの前後関係が複雑な場合
解説例では、リンゴのレイヤーと手のレイヤーがあります。
どちらを手前に持ってきても正常に見えないときは、レイヤーマスクを使用しましょう。
どこをマスクするか決める
まずは、レイヤーマスクで隠す箇所を決めましょう。
手のレイヤーを手前にして、手のレイヤーの緑色の箇所を隠せば、正しい見え方になりそうです。
レイヤーマスクを作成する
1.手のレイヤーを選択します。
2.[レイヤーマスクを作成]ボタンを押します。
※解説図は、レイヤーマスクを作成した後の画面です。
マスクで手の一部を隠す
3.手のレイヤーのレイヤーマスクが選択されていることを確認します。
4.[消しゴムツール]で隠したい場所をなぞり、マスクを作ります。
前後関係が合った絵になる
手のレイヤーを部分的に隠したことで、前後関係が合った絵になりました。
レイヤーマスクを使うと、リンゴのレイヤーと手のレイヤーの内容を消さなくても済むので、後から調整する場合に便利です。
実践編②.1号影の中だけに2号影を塗りたいとき
影の中だけに影を塗りたい場合
1号影の中からはみ出さずに、2号影を塗りたい場合はどのようにすればよいでしょうか?
解説例では、バラのベースの上にレイヤーをクリッピングして、影1を塗っています。
影2レイヤーも同様にクリッピングをしました。
影2レイヤーはベースに対してクリッピングされているので、影1で塗っていない部分も塗れてしまいます。
このような場合には、レイヤーマスクを活用しましょう。
影1の選択範囲を作成する
1.レイヤーパネル内にある影1レイヤーのサムネイル上で、Ctrl+左クリックをします。
影1レイヤーの選択範囲が作れます。
影2にレイヤーマスクを作成する
2.影2レイヤーを選択します。
3.[レイヤーマスクを作成]ボタンを押します。
影2レイヤーにマスクを作ったことで、影1の範囲外は隠れることになり、はみ出さなくなります。
※解説図は、レイヤーマスクを作成した後の画面です。
影2を塗る
4.影2レイヤーを選択します。
5.薄い影の範囲の中だけに、濃い影を塗ることができます。
実践編③.レイヤーの一部に色調補正をかける
レイヤーの一部に色調補正をかけたい場合
解説例の1枚のイラストに、部分的に色調補正を加えてみましょう。
レイヤーの一部に色調補正をかけたい場合は、[編集]→[色調補正]から色調補正をかけるのではなく、色調補正レイヤーを使います。
色調補正レイヤーを作成する
メニューバーから[レイヤー]→[新規色調補正レイヤー]→[カラーバランス]を選択します。
色調補正を加える
色調補正のカラーバランスを適用しました。
空と海は望んだ色になりましたが、砂浜の色まで変わってしまいました。
砂浜の部分だけ、色調補正がかかっていない状態に戻しましょう。
レイヤーマスクを調整する
色調補正レイヤーを作成すると、自動的にレイヤーマスクが作成されます。
1.色調補正レイヤーのレイヤーマスクを選択します。
2.[消しゴムツール]でマスクをかけましょう。
砂浜と海の境目はマスクを滑らかにしたいので、透明色を設定したブラシ濃度の低い[エアブラシツール]を使っています。
マスクをかけた箇所は色調補正の効果が隠れるので、色調補正前の状態になります。
部分的に色調補正をかけたイラスト
色調補正レイヤーにマスクをかけることで、レイヤー内の一部だけに色調補正をかけることができます。
キャラクターの仕上げなど、レイヤーを部分的に加工したい場合に使ってみてください。
実践編④.透明な質感を表現する
カーテンなどの透明感を表現したい場合
レイヤーマスクを使うことで、透明な物体も表現できます。
窓の手前に描いたカーテンを透明にしてみましょう。
透明にしたい箇所にマスクをかける
1.カーテンのレイヤーにレイヤーマスクを作成します。
2.カーテンのレイヤーのレイヤーマスクを選択します。
3.ブラシ濃度を下げた[消しゴムツール]や、透明色をセットした[エアブラシツール]で、透明にしたい箇所にマスクをかけます。
半透明なマスクをかけたい場合、ブラシ濃度を下げた描画ツールを使うのがポイントです。
※解説図は、レイヤーマスクを作成した後の画面です。
カーテンが部分的に透明になる
カーテンのレイヤー自体の不透明度を下げると、全体的に透明になってしまいます。
カーテンのレイヤー自体を消しゴムなどで消してしまうと、後から透明感を変更するのが大変です。
レイヤーマスクを使うことで、カーテンを部分的に透明にできます。
後から透明感を変更する場合は、マスクの内容を調整して対応できます。
まとめ
クリスタのレイヤーマスクの解説でした。
レイヤーマスクは、レイヤーに描画した内容を部分的に隠す機能です。
レイヤーマスクで一時的に隠しておくことで、レイヤーの内容を消してしまうよりも後からの修正・変更が簡単になります。
様々な使い方ができるレイヤーマスクの機能を、活用してみてください。