イラストを描くときに、複雑なものを簡単な図形に置き換えて考えてみることは、多くの人が実践していることだと思います。
人体や背景も、円柱や箱などのシンプルな図形の組み合わせでアタリを取る方法があります。
ただ、ひとことで円柱や箱と言っても奥深く、実際に描くとイメージと違ってうまく描けない……という経験をしている方も多いはず。
物体の本当の形と、人が目で見たときに見える形では、微妙な差違があるのですが、理解するのは難しいです。
この記事では、月城弌さんのTwitterのご投稿「絶対知っておくべき円柱のこと」を紹介します。
目で見た通りの自然な円柱を描くための知識を詳しく説明してくださっています。
イラストのクオリティを上げるために、円柱の描き方について理解を深めていきましょう。
※この記事で紹介している内容はご本人の許可を得て掲載しています。
イラストのクオリティを上げる絶対知っておくべき円柱のこと
描き方編:円柱を描くときの注意点
まずは円柱を描くときのよくある間違いと、その理由をご紹介します。
円柱の角は丸く描こう
円柱の底面を描くときに、左側のように角を尖らせて描く人を多く見かけますが、これはよくある間違いです。
底面は角を丸く、自然な楕円を描きます。
これは、カップを書く時などに応用できるそうです。
円の直径と楕円の中心線は一致しない
円の直径と楕円の中心線が一致しているような描き方も多くみられます。
しかし、円柱を描くときは、本来の円の直径より少し手前に楕円の中心線がくることになります。
なぜなら円柱の目に見える範囲は、円の直径よりも手前部分のみだからです。
この考え方は波紋を描く場合などに役立ちます。
側面の幅は圧縮されていく
円柱の側面を等分する際、側面の幅は均一ではなく、左右にかけて幅を圧縮していくのが正しい描き方です。左右にパースがかかっていくので幅が圧縮されます。
スカートのひだを描くときの参考になります。
その他知っておいた方が良いこと
円周を描くときは、図のように矢印の方向を意識しましょう。そうすることで、底面の角が尖ることを防ぎます。
これは、靴下を描くときなどに応用できます。
また、パースがついているときは同じ向きの円柱でも底面の見え方が変わるので、楕円の幅が変わります。
円錐や植木鉢型を描くときも同様です。
「円柱を描くときは楕円の端が尖ってはいけない」と知っている人でも、円錐型や植木鉢型になったときに間違えてしまうことが多いそう。
側面の稜線をそのまま楕円に繋げるイメージで描くのがおすすめです。
解説編:あまり知られていない知るべき楕円の話
円柱についてのさらに詳しい解説になります。
おすすめは、理解したうえで感覚的に描くことだそうです。空間上の立体ではなく、あくまでも実際に見える形を描く、ということに集中するとうまくいくとのことです。
そもそも正円を斜めから見たら本当に楕円なの?
正円を斜めから見ると楕円になります。
図は、人物の目線で地面にある正円を見たときを表しています。
人物の目の位置と地面にある正円を繋ぐと傾いた円錐になることがわかります。
このように、傾いた円錐の断面図=斜めから見た円となります。
なぜ楕円の長軸と円の直径がずれるの?
まずは前提として、円の中心は正方形の対角線の交点です。
一方、楕円の中心は短軸の中点、長軸の中点となります。
「作図」にて楕円の長軸と円の直径がずれる理由を解説しています。
- 正方形を斜めから見てみましょう。
この時点で既に、対角線の交点(円の中心)が少し上に位置することに注目です。 - 円を斜めから見ると楕円になることを思い出してみましょう。
短軸の中点=楕円の中心なので、オレンジの線で表されているACの中点が楕円の中心になります。そうすると、青い線で長軸を表現することができます。 - 2で描いた長軸の位置を目安に楕円を描きましょう。
上記を上から見たときと、目で見たときの図になります。
この画像では、空間上での円の直径と、画面上での楕円の長軸がずれる様子を表しています。
- 黄色:円の直径
- 青色:楕円の長軸
- 赤色:円柱側面の折り返し地点を結んだ直線
円柱を斜め上から見たとき、この3つはすべてずれます。
空間上での円の直径と、画面上での楕円の長軸がずれる様子 pic.twitter.com/PDCGuLWwUE
— 月城弌?ヘチマ (@oekaki_tukisi) January 16, 2021
円にパースがつくと本当に楕円になるの?
透視図法は物体を平面に投影したものなので、図のように楕円になります。
さらに、円錐を斜めに切った断面は楕円となります。
正確には楕円以外にも放物線、双曲線になりますが、今回は楕円のみで説明します。
おまけ・切り方による見え方の違い
- 楕円:側面を一周回って切るとき
- 放物線:側面と平行に切るとき
- 双曲線:上二つ以外の切り方をしたとき
ここから、円錐を斜めに切った断面が楕円となる理由の解説となります。
- 地面にある円を人物の目の高さから見たときの目線を表した円錐です。
- 空間を斜円錐の底面と平行にスライスしていきます。すると、斜円錐のスライス断面が全て円になることがわかります。
- スライスしたものを斜円錐が円錐となるようにスライドさせます。
- このとき、斜円錐と一緒に画面もスライドしていることに注意しましょう。
- すると、円錐を斜めに切った状態になることがわかります。
- つまり、今画面に描かれているものは”正確な楕円”となります。
- 最後にスライドしたものを元に戻します。
まとめ
円柱についての知識をご紹介しました。
物体の見え方についての知識は、イラストをよりリアルに、そして上手く見せるための重要なポイントとなります。
この記事を参考に、ぜひイラストにも生かしてくださいね。
最後に、月城弌さんのTwitterとpixivをご紹介します。
他にもイラストの練習や研究と、繊細で美しい女の子を中心とした魅力的なイラストがアップされています。ぜひご覧ください!