多くの人がイラストや漫画を描き始めるとぶつかりやすい、背景という壁。
勉強をしようとしても、専門用語が多くてよく分からない。描いてはみたものの、キャラクターと背景の位置や大きさがなじまないなど、お悩みも多くあるはずです。
そんな方に今回ご紹介するのは、公真さんがpixivに投稿されていた「比較的簡単にパース背景を描く方法」です。
平面図から立体を起こすために理解しやすく、単純な背景なら簡単に描けるとのこと。カラーイラストでもモノクロの漫画でも使える技法です。
背景の描き方をマスターして、作品をレベルアップしましょう!
※この記事で紹介している内容はご本人の許可を得て掲載しています。
背景を平面図から引いたパースでカンタンに描く方法
学校の廊下背景を一点透視のパースで描く
まずは、一点透視でよく用いられる学校の廊下を例にご紹介します。
作業はPhotoshopで行っていますが、同様の加工が出来るソフトであれば何を使用しても構わないとのことです。
(1)平面図を描く
背景の平面図を描きます。
空間の大きさを把握しやすいように、青線のマス目は今回は50cmと設定します。
幅が約3.5m、奥行が約20mの廊下になりました。
窓、柱、ロッカー、蛍光灯、教室、ドアの位置など、背景に入れたい要素の位置を詳細に描き込みます。
次に、中心線と補助線を描きます。
中心線の延長線上に消失点が来ることになるので、消失点を意識して配置すると良いでしょう。
補助線は中心線に対し、対称に2本配置します。
(2)ツールを使って縦につぶし、パースの強さを決める
「移動ツール」を使って、中心線がずれないように縦につぶします。
30~40%くらいが目安です。たくさんつぶすとパースが強くなります。
「移動ツール」のバウンティングボックスの中心と、中心線が合っていることを確認してから作業してください。
次に「編集」→「変形」→「遠近法」で台形に歪めます。
ここで目線の高さ(アイレベル)とパースの強さが決まります。写真などを見ながら不自然でない程度に好みの加減で決めましょう。
(3)中心線と補助線を延長し、消失点を決める
中心線と補助線を延長し、つながった場所が消失点になります。
消失点と交わる水平線(アイレベル)も描きます。
アイレベルの高さを調べてみましょう。
一番手前のマス目の一辺の長さをそのライン上で縦に並べてみます。
1マス50cmの設定だったので約150cmになっていることがわかります。
パースの強さやアイレベルの高さが気に入らない場合は、(2)と(3)の作業を繰り返し、気に入るポイントを探しましょう。
(4)背景の天井の高さを決める
天井の高さを決めます。
ここでは廊下の幅と同じ長さに設定しました。
一番手前のラインの辺(廊下の幅)に沿って同じ長さの辺の正方形を描き、4つ角から消失点に線をつなげます。
それ以外の高さにしたい場合は(3)でアイレベルを調べた手法を応用し、一番手前のラインから縦方向にマス目を配置し、任意の高さに設定します。
後述する家具や窓などの高さも同様に決めます。
(5)窓や家具などの物体を立体にする
平面図に配置した物体を立体にしていきます。まずは柱を立体にしました。
次に、ロッカーを立体にし、壁や天井も描きます。
天井やロッカーなどのマス目状のものも、同じ方法で平面図から描くことができます。
壁面に対する窓やドアも同様です。
この方法を使えば、対角線を描いて分割する必要がありません。
(6)線画を描いて背景が完成!
(5)を下描きにして線画が完成しました。 窓枠などの細部には線を足し、立体感を出しました。
ワンポイント
消失点に近い絵の奥ほど線が集中してごちゃついたり、濃く見えてしまいます。消しゴムブラシで薄くしたり、まばらに描いて薄く見せると、バランスが良くなります。
遠くにあるものを霞ませて見せる手法を「空気遠近法」といいます。
おまけ。同じ平面図からさまざまなパースが作れる
(2)の縦につぶす変形の加減で、同じ平面図を元にしてもさまざまなパース絵を描くことができます。たくさんつぶすとよりパースが強くなっていきます。
不自然なパースにならないように注意しましょう。
人物入りの屋内背景を二点透視のパースで描く方法
二点透視の背景も同様の方法で描くことができます。手順を追ってご紹介します。
(1)簡単な下描きと平面図を描き、補助線を引く
人物を含めたイラストになるため、先に簡単な下描きを描いてから進めるとスムーズです。
次に一点透視で廊下を描いた時と同様、部屋の平面図と補助線を描きます。
下描きのイメージに合わせてソファ、テーブル、棚などの家具と人物を配置します。
基準となるマス目は1mとしました。
平面図のすべての辺を延長し、補助線を引きます。
今回は四角い部屋なので、補助線は4本となりました。
カメラ位置である「自分」が立っている場所から、見ている方向へ引いた線が中心線となります。部屋の奥の角との位置関係にも注意しましょう。
(2)平面図を回転させる
平面図を下描きで設定した物体の位置に近づくようにイメージしながら回転させます。
(3)平面図を縦につぶしてパースの消失点を決める
平面図を縦方向につぶします。
中心線が垂直になるように注意しながら遠近法で変形させ、物体の位置を下描きのイメージに近づけます。
4本の補助線を延長してつなげると消失点が決まります。
(4)天井の高さを決める
床のマス目を基準に天井の高さを決めます。
ここでは3mくらいと設定したので、マス3つ分の高さになります。
(5)家具を立体化し、人物を描く
全体の絵のバランスを見ながら、人物や家具の配置を調整しましょう。
今回は一部の人物の位置を下描きと違う場所に移動しました。
(6)細かい線画を描いて背景が完成!
線画を描いていきます。
大きな家具のほかに、小物も描き足します。
ソファは丸みを持たせました。
色を塗って完成です!
ワンポイント
背景の主線はブラシツールとシフトキーを使った直線で描いていますが、そのままだと無機質で固い線になってしまうので、散布ブラシを使い手描きのようなぶれた線にしてるそうです。
絵の雰囲気や好みで試してみましょう。
作例のご紹介
室内だけではなく、建物や町並みなどの屋外も平面図を利用して描くことができます。
人物入り屋内背景(雑貨屋)
教会のような建物
建物
町並み
蛇行した道や川
まとめ
ハードルが高いと感じてしまうパース背景も、平面図から考えて描くことでぐっと簡単に感じられますね。
これから背景を描き始める方、背景に苦手意識を感じている方は、公真さんの講座を参考にチャレンジしてみてください!
最後に、公真さんのホームページ、Twitter、pixivをご紹介します。他にも素敵なイラストや作品をたくさんご投稿されています。ぜひご覧ください!
公真さん「平面図から簡単にパース背景を描く方法
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