「キャラの全身イラストは描けるようになった。でも、何だかぎこちないポーズになってしまう」
「人間らしい立体感のある顔や身体が描けない」
キャラクターイラストを描く際、このような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか?
そんな方におすすめしたい勉強方法が、人体をより深く理解する学問「美術解剖学」。
今回は美術解剖学を学び始めたい方に向けて、本を選ぶポイントと良書4冊をご紹介します!
この記事の目次
そもそも美術解剖学って何?本を選ぶポイントとは
美術解剖学とは、人間の内部の構造(=筋肉・骨・臓器等)への理解を通して、美術制作の観点で人体構造・形状を学ぶ学問のこと。
人体や動物の骨格・筋肉などの構造、それが動作・運動でどう変化するかという知識は、絵画や彫刻のみならず、イラスト制作でも大事になってきます。
アニメ・漫画に出てくるようなキャラクターのイラストから描き始めると、平面的に物体を捉えて描く癖がついてしまうことも。
立体的に人体を学び始める方におすすめなのが、美術解剖学についての本。本を選ぶ際に注意いただきたいのは、ひとくちに解剖学といっても、以下のような2種類ある点です。
- 医学分野に特化した本
- 美術分野に特化した本
医学分野の本は部位の名称や形状を事細かに解説したものが多く、イラストにそのまま活かすには扱いづらい場合があります。 イラストを描くためにこれから解剖学を学びたい!というスターターの方には解剖学の領域に踏み込んだイラスト教本を手に取る方がおすすめです。今回はその中でも特に評価の高い本を4冊ご紹介します!
イラストの為に解剖学を学び始めるならこれ!おすすめ本4選
一度は目を通したい!人体解剖学の登竜門のような本『ソッカの美術解剖学ノート』
『ソッカの美術解剖学ノート』は、複雑な人体を理解して描きたい人の登竜門的な1冊です。骨・筋肉の人体の内部の仕組みや描き方に至るまでを、デッサン画だけではなくコミカルな挿絵や詳細かつユーモアのある解説コメントとともに学ぶことができます。
模写して練習する教材としても十分な内容ですが、それ以上に自然な動きや身体の仕組みを「理解する」ことに特化した書籍です。見て真似をするだけではなくしっかりと仕組みを理解して描きたい方に読んで欲しい内容です。
この本はなんと大ボリュームの約650ページ! 骨や筋肉の部位一つ一つを丁寧かつ分かりやすく解説しています。
一度買えば一生参考に出来る程の情報量が詰まった本です。
「リアルで格好いい」を実現するドローイングの秘訣が詰まった本!『キム・ラッキの人体ドローイング』
『キム・ラッキの人体ドローイング』は「アクション系が描きたい!」「仕組みや構造はそこまで深堀りしなくても良いから、イラストにすぐに活かせる近道が知りたい!」という方におすすめです。
この本の表紙イラストのような迫力あふれる身体の描き方をするにはどうすれば良いのか、その近道を教えてくれます。
少し注意したいのが、基本的にはある程度筋肉量のある男女をベースに描いている点です。人体の筋肉や骨の構造・役割に関する解説はもちろんありますが、『ソッカの美術解剖学ノート』のように標準的な体型や日常的な動きではなく、アクション系の肉体と動きをベースとした作画・解説となっています。
『スカルプターのための美術解剖学』写真の多さがピカイチ!生身の人間を通してじっくり観察できる本
『スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版』は、これまで紹介した2冊とは異なり、実際のヌード写真を多数用いて解説しています。
リアルな人間の写真に筋肉の組織や骨の形・構造を描き込んで解説しているので、人体の内部構造と実際の表面の形状を比較して理解できます。テキストでの説明は少ない分、写真資料が非常に充実しているため、とにかく見て学ぶことに特化した内容となっています。本を見ながらすぐに絵に活かしたい人や、リアルな人物画を描く人の「見る」資料としてとてもおすすめの本です。
注意点は、テキストが少ない=解説が少ない点です。あくまである程度理解した状態での確認用か、とりあえず見て真似してみる練習の最初の一歩とした方が良さそうです。『ソッカの美術解剖学ノート』のように部位ごとの役割や「このような動きはできないので注意!」等というアドバイスは無いので、そのような詳細な解説をしている本と合わせて読むことをおすすめします。
シリーズで読むと解剖学が深く学べる本『モルフォ人体デッサン 新装コデックス版』
『モルフォ人体デッサン 新装コデックス版』は、全身を描くのに抵抗がある方や、全身を描くことはできるものの「自然な動きがつけられず、どこか硬い絵になってしまう」等の悩みを持つ方に読んで欲しい本です。一番の魅力は約300ページにも渡る大量のデッサン。模写して描く・見て学ぶことに特化しているので、自分がこれまで描いてきた絵と比較して何となくで描いてしまっていた点を見つけ出したり、より自然な動きに見せるコツを掴む練習用に利用することができます。
本書はシリーズとなっており、『箱と円筒で描く』、『手と足を描く』、『脂肪とシワを描く』等の関連シリーズ書籍と合わせて読むことでより深く、様々な年齢・性別・体型の人物画を練習するのに役立つ内容です。テーマごとに本が分かれているので、イラストを描く途中でふと振り返ったり、自分の苦手分野に合わせて復習したりできるのも良いポイントです。
「じっくり読むのは苦手だけれど、もう少し解剖学のみに焦点を当ててインプットを増やしたい」という方であれば『スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版』と合わせて読んでみると良いかもしれません。
まとめ
今回は、美術解剖学のおすすめ本4冊をご紹介しました。「解剖学 本」等で検索するとたくさんの本が出てきますが、解説の方法や画が本によってかなり異なります。
解剖学の本は他の技術書に比べて少し高価なものが多いので、自分の目指したい絵柄や苦手分野、または用途に合っているかを検討してから購入する方が良いと思います。今回ご紹介した4冊はどれも充実した内容ですが、自分に合った1冊で良いスタートが切れると良いですね。