乗り物の中でも人気のあるバイク。ただ車体の形状が複雑で細かいパーツがいくつもついており、絵にするのが難しい題材です。格好いいバイクのイラストに仕上げるためにも、全体のバランスの取り方や、各パーツの描き方を覚えてしまいましょう!
今回はナイブスさんの「バイクの描き方」講座をpixivから紹介。マトリックス(行列の表、方眼)でアタリを描く方法、乗る人の姿勢、タイヤ・エンジンのパーツを描くポイントなどが参考になるでしょう。
※この記事で紹介している内容はご本人の許可を得て掲載しています。
この記事の目次
マトリックスを目安にしたバイクの描き方
マトリックス(行列の表)を用いたバイクの描き方講座です。マトリックスのマス目に合わせてバイクのパーツを当てはめていくことで、バイク全体のバランスが崩れにくくなります。
目安になるマトリックスを作る
(1)4列、7行の正方形を描きます。
便宜上、列に1〜7、行にA〜Dの名前をつけています。以後の説明では、★は「BC23の中央」、○は「C5」、△は「D6左下」というように、バイクのパーツの位置を行列番号で呼びます。
マス目は、30センチ×30センチ×15センチのブロック7つを4段積んでいくような感じで描きましょう。
バイクのタイヤを描く
(2)CD12とCD67の4マスに丸を描きます。
(3)CD12に描いた丸の中に、3/4、1/2の大きさの丸を描きます。
(4)CD67に描いた丸の中に、2/3、1/3の大きさの丸を描きます。
CD12は前輪、CD67は後輪です。
オートバイも車と同じで地面についているのはタイヤだけなので、タイヤの丸部分はバイクを描く際の基本になります。2つのタイヤの距離と大きさがおかしいと、他の部分を丁寧に描いても、変なオートバイになってしまいます。
バイクのエンジンを描く
(5)C34の中央下に丸を描きます。
(6)C4下半分に四角を描きます。
(7)手順6の四角を120°起こした四角を描きます。
(8)手順5と6で描いた丸と四角の下に、左右の辺が1/4くらいの長さの四角を描きます。
オートバイというと、ライト・メーター周りやタンク・カウルに囚われがちですが、バイクはタイヤでエンジンを吊るしている乗り物です。ざっくりとでよいので、エンジンの位置と大きさをしっかりと決めておきましょう。
エンジンの詳細
エンジンの外観は様々ですが、セルモーターやウォーターポンプといった補機類の位置が多少違う程度で、バリエーションが多いわけではないです。クラッチやギアといった駆動系の配置はある程度は似ています。
エンジンまわりを理解できると、説得力のあるオートバイを描くことができます。
エンジンの図解と各部の名称を載せています。オートバイのエンジンは左右で形が違うので、写真を「反転トレス」など、しないようにしましょう。
フロントフォーク・スイングアームを描く
(9)前輪とハンドルをつなぐフロントフォークと、後輪とフレームをつなぐスイングアームを描きます。前輪中央からAB23の中央へ、細い四角で結びます。
(10)手順9で描いた四角の上端に細い四角を描き、手順9の上端と前輪の接点との中間にも細い四角を描きます。
(11)手順10で描いた二つの四角の間に、さらに四角を描きます。
(12)C45の下から1/4くらいの場所と後輪中央を四角で結びます。
ハンドル・シート・ステップを描く
(13)今度はハンドル・シート・ステップを描きます。まずB56に後ろ上がりの薄い菱形を描きます。
(14)CD5の少し前寄りに、小さい丸を描きます。
(15)A3の真ん中少し下に、小さい丸を描きます。
バイクの種類によるバランスの違い
ここで、オートバイの種類によるバランスの違いを見てみましょう。
オフローダー
オフローダーは悪路を走るために生まれたバイクで、色々な路面に対応させるため、タイヤが大きくサスペンションの動く範囲も大きいのが特徴です。
・浅い水や泥の中を走破してもエンジンに水が入らないように、エンジンは小さく、位置が高くなっている。
・フロントフォークは長くなり、ピボットの位置も高くなる。
・悪路では尻を乗せる位置で重心が移動するので、シートが長い。
アメリカン
アメリカは、ハーレーやハーレーのレプリカのようなものです。大陸の平坦な道を長時間走っても楽にクルーズできるように作られているバイクなので、運動性能は低くなります。
・エンジンはOHVなので下部が大きく、シリンダー配列はV型二気筒。エンジンがOHCの車種でもそれっぽく作られている。
・ホイール間が長く、4:7ではなく、4:8のボックスで描く。
・直進性を強くするため、フロントフォークが寝ていて長い。
・シートは低く、ステップは前になる。
レーサータイプ
レーサータイプはエンジンが小さく、重心を下げるため前傾がやや強い。
・後輪が前輪より太いことが多く、後輪の外周が前輪より大きい。
・スイングアームは太く、諸事情でへの字に曲がっているものが多い。
・ライダーの前傾姿勢を作るため、ステップは後ろ寄りでハンドルが低い。
・回頭性能を良くするため、フロントフォークが立っている。
2Dのマトリックスを3Dにしバイクに厚みをつける
当講座のサブタイトルでもある「15センチの木馬」を意識して、立体的に厚みをつけていきます。主だったパーツを正しい配置とバランスで、木馬を描きましょう。
(1)角度をつけて、15センチ幅のガイドラインを引きます。
(2)バイクの図をそのまま15センチほど厚みをつけます。
(3)「15センチの木馬」の完成です。
このままでは本当の木馬に見えてしまうので、ハンドルを左右に30センチ程度、エンジンはオイルパンだけを2倍、その他の部分は3倍に伸ばします。ステップはエンジン幅から10センチくらい突き出します。
ハンドルやステップが宙に浮いていますが、この段階では気にしなくて大丈夫です。
人を乗せてみると、バイクの感じが出てきました。大型や小型のバイクでは少しサイズ感が変わってきますが、基本的には当講座のバランスからは外れません。
オートバイは、「タイヤ・エンジン・フォーク・スイングアーム」で形がほぼ決まります。車と違ってバイクは人が大きく見えているので、「ハンドル・シート・ステップ」の位置も重要になります。
バイクの細部を描く
オートバイの細部を描きます。車はベースの箱を削っていくような感じで描きますが、バイクはベースに盛り付けする感じで描きます。
ハンドルバー
トップブリッジにハンドルクランプで固定されています。
タイヤ
バイクは車体を傾けて曲がるので、タイヤの断面は丸くなります。
タイヤの幅は、前輪が10〜12センチ、後輪が14〜16センチです。前輪は2〜3割細めて、後輪は丸みをつける感じで描きます。
また、スイングアームの先はすぼまっていることも意識しましょう。
フォーク
2本のパイプでタイヤを挟んでいるので、ハンドルで前輪を左右に回すことができます。
ハンドルのレバー・スイッチ類
各種レバー・スイッチの名称を載せています。
ブレーキ
金属のディスクに油圧ピストンでパッドを押し当てます。
エンジン
シリンダーヘッドは、シリンダーの倍くらいの大きさです。左は発電機とドライブスプロケット、右はクラッチで、左右非対称です。反転トレスはしないようにしましょう。
シート
2人分で段差がついています。ライダーシートは後ろが広がっています。
フレームのバリエーション
次はフレームについてです。各種フレームの形式を見てみましょう。
クレードルフレーム
クレードル(籠)の名前の通り、エンジンを籠に入れるスタイルです。カウルのないバイクに多いフレームの種類です。
この図は「ダブルクレードル」という2本のパイプで籠を形成していますが、強度が必要なエンジン下のみ2本に分岐する「セミダブルクレードル」と呼ばれる種類もあります。重いですが、エンジンの振動を緩和できるメリットがあります。
ダイヤモンドフレーム
クレードルと違い、頑丈で重いエンジンをバイクの強度部材として積極的に利用している、強度効率の良いフレームです。ピボットやサスペンションもエンジン側に取り付けて、さらに効率を上げている車種もあります。強度部材がエンジンなので、軽量ですが振動が伝わりやすいというデメリットもあります。
ツインスパーフレーム
アルミ成型技術が生んだ、高効率・高剛性のフレームです。2本の太いアルミチューブでエンジンを包み込み、ダイヤモンドとクレードルの長所を併せ持っています。
車種によっては、フレームがガソリンタンクを兼ねる場合や、エンジン側にピボットを持たせる場合もあります。
バイクのタンク・カウルを描く
最後に、タンク・カウルを描き加えます。
クレードルフレームのネイキッド(カウルなし)
20年くらい前は割とスタンダードなスタイルで、各メーカーは、ほんの少ししか違わない車種をいくつもラインナップして、しのぎを削っていました。現在でも「オートバイ」というと、このスタイルを思い浮かべる人が多いようです。
ダイヤモンドフレーム+ハーフカウル
現在では、クレードルフレームから主役の座を奪っているのが、ダイヤモンドフレームです。高速走行では安定感があり、ライト・メーターといった重量物がハンドルに乗っています。操作性や快適性が悪くなるのを嫌い、ライト〜メーター周りのみをカウリングしたモデルが増えています。
ツインスパーフレーム+フルカウル
フルカウルといえば、かつてはレーサーレプリカの代名詞でしたが、近年ではスポーツツアラーのイメージの方が強くなってきました。オーバーリッターのビッグクルーザーとなると、速度域はレースと同じです。大きなカウルで車体を覆って、風をうまく切らないと人間が耐えられません。
バイクの完成
オートバイというと、タンクやフロントカウル、メーターやライトが「顔」と思われがちで、カウリングには思い入れたっぷりだけど全体的にはへろへろ、といった感じのバイクの絵をよく見かけます。
バイクの主役はエンジンであり、タイヤであることを意識しておきましょう。
陰の線を消しつつ、ディテールの過不足を修正してバイクの完成です!
タンデムステップやスタンド、ミラーやウィンカーといった小物で表情が出るとのことです。
バイクに乗る人物を描くポイント
バイクに乗る人物の姿勢について
バイクに跨った人を描く際のポイントを紹介しています。車種によって人の姿勢も変わってきます。
共通しているのは、猫背になってはいけないことと、腕に力が入っていないことです。
ネイキッド・スーパースポーツ
基本となるライディングポーズです。わずかな前傾姿勢と、ほどよく力の抜けた腕がポイントです。
オフローダー
体とハンドルが近く、肘は直角に近い角度で曲がります。中腰に近い感じで、路面変化に合わせて、臨機応変に着座位置を変えられるように乗ります。
アメリカン
他の車種と違い、足・膝ではなく、尻で体重を支えます。チョッパーのイメージで腕は伸びそうですが、むしろハンドルは普通のバイクよりライダーに近くなります。
レーサータイプ
他の車種では概ね後輪寄りに重心を置いていますが、レサーサータイプでは中央に重心を置きます。風を避け、重心を低くする意味合いも兼ねて、強い前傾姿勢になります。
バイクに人が乗るときの車体の沈み
オートバイに人が乗った際は、人の体重で見て分かるくらいに(5〜15cm)車体が沈みます。これは重要なポイントで、トレースや模写で描かれたバイクに人物を足した絵が「上手いのだけどなにか違う」と感じてしまうのは、車体の沈みを考えていないのが原因です。
自動車では、車体に対して人の体重が少ないので、車高は変わりません。
バイクのイラストメイキング
(1)構図・ポーズを考える
ナイブスさんのイラストメイキングを載せています。どのような手順でバイクと人物を作画していくのか見ていきましょう。
2つのポーズを考えています。斜め後ろからサイレンサーとふとももが大きく見えるアングルは、「女の子とバイク」を表現する代表的なポーズの一つとのことです。
もう片方は、コーナリングで足を前に出すポーズにしています。オフロードのライディングは、ワイルドでカッコいい絵面です。
(2)アイレベルを決める
1つ目のイラストは、ある程度見せたいものが決まっているので、迫力を出したい前後輪の差からアイレベルを決めています。
2つ目のイラストは、望遠の絵です。アイレベルは定めてはいますが、気にしなくても問題ありません。
(3)目安となるマトリックスを作る
パースと3つの消失点を意識して、4×8のマス目を描きます。奥行きの方向を8マスにしているのは、マス目を半分にして分割しやすく、簡単に描きやすいからです。端の1マスは削除するので、長めに描きましょう。
(4)バイクのアタリを描く
メインの講座で解説した内容に沿って、バイクのアタリを描きます。
2つ目のイラストではバイクが傾いているので注意が必要ですが、ティッシュ箱のような直方体が描ける程度に空間が把握できていれば、問題ありません。
(5)バイクのパーツを描く
厚みをつける→細部を描く→タンク・カウルを描く、といった手順でバイクの作画を進めていきます。メインの講座の解説ではステップを分けましたが、実際に作画する際には描きやすさと見栄えを第一にして、優先順位を変えても問題ありません。
だからこそ、アタリの段階で、「タイヤ・エンジン・フォーク・スイングアーム」、「ハンドル・シート・ステップ」をきちっと決めて置くことが肝要です。
(6)人物のアタリを描く
人物のアタリを入れます。
2つ目のイラストでは、フロントにがっつりと加重をかけてリヤを流しているので、覆いかぶさる感じで描きましょう。
(7)人物・バイクのアタリを参考にラフを描く
アタリを参考にして、ザクザクとラフを入れていきます。
しっかりとしたバランスのアタリが下地にあれば、描きたいところ、見せたいところを思い切り描いても、オーバーな表現になってしまうことがなくなります。
オートバイの絵は難しそうに見えますが、練習すれば描けるようになります。マトリックスを使った作画方法や、イラストメイキングの手順を参考にして、オートバイの絵を練習していきましょう。
まとめ
ナイブスさんによる、バイクの描き方講座でした。バイクのイラストが描けずにお悩みの方は、ナイブスさんの解説を参考にしてみてください。
最後に、ナイブスさんのプロフィールをご紹介します。ナイブスさんはサークル活動をしていらっしゃり、漫画・イラストを公開していらっしゃいます。Pixiv・Twitterでは他にも素敵な作品をご投稿していらっしゃいますので、ぜひご覧ください!
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