イラストの着色工程では、色相・明度・彩度をどのように考えて色を選べばよいのかが分からず、悩んでいらっしゃる方も多いと思います。色を選ぶ際のコツや考え方を知ることで、見栄え良く、スムーズな着色作業ができるのではないでしょうか。
そこで今回は、イラストの「色」についてTwitterにまとめていらっしゃった、増岡さんの解説から、色の仕組みや色を選ぶ際の考え方を見てみましょう!
※この記事で紹介している内容はご本人の許可を得て掲載しています。
①色が見える仕組み
錐体細胞が赤い波長の光を受容することで、頭が赤い色を知覚しています。
また、錐体にはL錐体(赤)、M錐体(緑)、S錐体(青)の3種類があります。
しかし、リンゴが赤く発光しているわけではありません。
太陽の光を受けて、赤い光以外を吸収し、赤い波長の光を反射しています。これがリンゴの特徴とのことです。
太陽光のスペクトルについてです。
人間は可視光線の範囲でしか見ることができません。
紫外線しか反射しない物体は、可視光線を全て吸収してしまうために黒く見えます。
光源が青一色だと、青い光はほとんど吸収してしまうので、りんごの色は黒に見えます。
ポイントは
①光源
②物体の光の反射と吸収
③錐体細胞が受けた刺激を脳が処理しているということ
となります。
②影の色の見え方
影の色の見え方は光源によって変わります。
増岡さんは、太陽光を意識して影を塗ることが多いとのことです。
全ての可視光線をカバーしていますが、少し黄色やオレンジが強いことが太陽光の特徴です。
①同じ色相の色で塗っています。
②白黒で見たときに、明暗があっていれば問題なく認識できるとのことです。
③太陽光の光を受けている部分は、黄色い波長をよりたくさん反射する(吸収できない)ので、黄色くなります。なので、黄色に寄せた色を塗っているとのことです。
Aの面の色は①と③で同じですが、BとCがより黄色くなることで、Aが青っぽく見えます。
さらに、左下に草原を置いています。
草は緑っぽい光を主に反射しているので、立方体が受ける光も緑っぽくなり、立方体は緑っぽい光を反射することになります。
具体的には「明るさが上がって」「赤みがやや中和され」ます。
③彩度の調整
彩度は露出の考え方で決めているとのことです。
露出は画面全体の光の総量のことを指すので、画面の中の物体が受ける光の量が露光量で変わることになります。
増岡さんの大体の絵は、やや露出量が控えめになっているとのことです。
イラストの肌色を明るい色、髪色を中間の色、制服の襟・カフスを暗い色とします。
(a)から露出を上げたのが(b)ですが、(b)は明るい部分の色情報がほぼ消えています。
色情報が消えるということは、彩度も下がるということになります。
また、(a)から露出を下げたのが(c)ですが、(c)は暗い色がほぼ黒になっています。
露出を変えると彩度が変わるということは、光の当て方で彩度が変わるということでもあります。
また、赤い数珠は一番彩度が高いモチーフなので、露出を上げても鮮やかさが保たれますが、彩度の上がった襟の縁と馴染んで見えます。
露出を下げると彩度が下がって、もとから彩度の低い髪の縁と馴染んで見えます。
露光量を調節し、彩度を調節すると画面にメリハリが出るとのことです。
一般的には明るいところと暗いところの彩度を低く、中間の色の彩度を高くすると立体感が出ると言われていますが、これは標準的な光量の下での話になるので、必ずしもその塗り方をしないといけないわけではありません。
解説イラスト左下の立方体は、(B)面との境目に薄い橙系の色でふわっとオーバーレイを乗せています。
また、もともと(B)面は一番彩度の高い色で塗っています。
右下の立方体は、彩度を調整し直しています。(A)面の彩度を一番高くしています。
逆光のような効果が出て、主役が(A)面ということが伝わります。
④色のデフォルメ(おまけ)
彩度が近い部分を線で囲っています。
(A)の写真はスマホで撮ったままで何の加工もしておりませんが、一番細かくメリハリが効いていてディティールが見やすいとのことです。
(C)は最早何も見えませんが、(B)はトマトの赤さが(白く飛んでいない箇所では)目立ちます。トマトを目立たせたい時は、その色を強調してあげると良いとのことです。
影とハイライトの配色アレンジについてです。
左の立方体から、ノーマル、影とハイライトの彩度を引いたもの、青系でモダンな感じにしたもの、明るいところと影色の赤みを少なくしたもの(蛍光灯の青みのある光)となっています。
本来は彩度がそろわない箇所ですが、暗さを明暗だけで出すとくすんでしまい、色相を加えると色の使用範囲が広がって画面が散らかってしまうので、彩度を上げることで血色を出しているとのことです。
彩度と明度は同じですが、手の色相がより黄色になっています。
また、コートの色に関して、光の当たるところは青に色相をずらしてカラフルさを強調しているとのことです。
まとめ
色の仕組みや塗りの考え方についての解説でした。色相・彩度・明度の考え方が分からずにお悩みの方は、増岡さんの解説を参考にしてみてください。
最後に、増岡さんのTwitterをご紹介します。他にも素敵なイラストをご投稿していらっしゃいますので、ぜひご覧になってください。
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