グレーで陰影を描き込んで、後から色を乗せる「グリザイユ画法」。グリザイユ画法をイラスト制作で用いた場合、一般的な塗り方に比べてどのような違いがあるのだろう?
そこで今回は、グリザイユのメリットとデメリットをご紹介していきたいと思います。
この記事の目次
グリザイユの基本手順
まず始めに、ペイントツールを用いた、デジタルでのグリザイユの塗り方の例を確認しておきましょう。
今回は、筆の筆菅の部分を、グリザイユで塗っていきます。
レイヤー1に、筆菅の下地の色を塗っていきます。
レイヤー2を新規作成して、グレーで陰影をつけます。
解説イラストのように陰影をつけた後、レイヤーの合成モードを乗算に設定すると…。
下地レイヤー+陰影レイヤー(乗算)が合わさって、下地の赤色に陰影が足された筆菅の絵になります。
乗算レイヤーを重ねているので、全体的に暗くなっています。
レイヤー3を新規作成して、合成モードをオーバーレイなどに設定します。
明るくしたい部分をエアブラシで塗っています。
レイヤー構成は上から、レイヤー3(オーバーレイ)、レイヤー2(陰影)、レイヤー1(下地)となっています。
グリザイユのメリット
明度/色相・彩度を分けて着色を進めることができる
一般的な塗り方だと、着色工程で、明度・色相・彩度を同時に考えて色を選ばなければなりません。
着色工程に慣れていない方や苦手な方は、どの色を使用すればよいのか分からない…、思った通りの色にならない…、と詰まってしまうことも多いのではないでしょうか。
グリザイユの場合は、明度のみを考えて陰影をつける工程、色相・彩度を考えて色を置いていく工程と、要素を分割して着色していくことができます。
明暗を意識したイラスト制作ができる
イラストにおいて、明暗は重要な役割を担っています。
強調させたい箇所の明暗の差を高くして、鑑賞者の視線を誘導したり、逆に強調させたくない場所は明暗の差を下げて、視線が向かないようにします。
グレーで陰影をつけていくグリザイユは、イラストの明暗の確認がしやすいことが利点の一つです。
色合いを変更しやすい
グリザイユは陰影レイヤー+色レイヤーで絵を表現します。
イラスト制作の途中で、「やっぱり、この部分を赤色から緑色に変更したい」となった時に、陰影レイヤーに手を加えずに、色レイヤーを変更するだけで対応することができます。
イラストの色合いが決まらない場合は、とりあえず陰影だけ描き込んでおく、といったことも可能です。
グリザイユのデメリット
乗算やオーバーレイを多用するので、仕上げの調整が難しい
グリザイユでの着彩は、陰影をつけるための乗算のレイヤー、色を入れるためのオーバーレイのレイヤーを多く作成することになります。
グリザイユのイラスト制作に慣れていないと、陰影が強すぎて画面が暗くなってしまったり、オーバーレイを入れすぎて彩度や明度が高くなりすぎてしまったりと、仕上げまでの調整が難しい部分があります。
イラストの色合い確認が終盤になりがち
陰影をつけた後に色を置いていくグリザイユでは、イラスト全体の色合いの確認が後回しになってしまいがちです。
イラスト制作の最初の方で、カラーラフなどでイラスト全体の色合いの方針を決めておくとよいかもしれません。
まとめ
グリザイユ画法の基本手順、メリットやデメリットのご紹介でした。
一般的な着彩方法が難しいと思っていらっしゃる方や、明暗を重視したイラスト制作を行いたい方は、グリザイユの塗り方も是非試してみてください。